平成30年(2018年)4月1日から「特例事業承継制度」が適用開始となり、令和6年(2024年)3月31日までに承継計画書を提出することで贈与税・相続税の全額が猶予される期間限定の利用しやすい制度となりました。
特例事業承継税制とは、贈与税、相続税の全額が猶予される制度です。事例で確認してみましょう。
株式会社×××
経営者 Aさん
後継者候補 Bさん(役員)
現在の経営者Aさんは、保有する評価額1億円の自社株をBさんへ贈与し、会社を譲りたいと考えています。
この場合、何も対策をせずに贈与すると、下記の贈与税がBさんに課税されます。
贈与税の計算(暦年贈与を行った場合)
(1億円ー110万円)×55%ー640万円=4,799万5千円
このままでは税金が負担となり、スムーズな事業承継の妨げになります。
しかし、特例事業承継税制を利用すれば、贈与税4,799万5千円が猶予され、実際の税金負担が0円となります。
猶予された税金は、Aさんが亡くなるまで猶予されます。Aさんが亡くなると、贈与税が免除され、相続税の対象となります。株式に係る相続税額についてはBさんが次の後継者に株を贈与(もしくは相続が発生)する時まで猶予されます。
この制度は中小企業(業種・資本金・従業員数により判定)が利用できる制度となっています。また、中小企業のうち、以下の条件に当てはまる場合には制度を利用することができません。
当初要件を満たしていたものの、時の経過で要件を満たさなくなる可能性もありますので、将来的にも要件を満たすかどうか、事前にご検討を頂く必要があります。
特例事業承継制度では複数の贈与者から複数の後継者(最大3人)への贈与等が対象となりました。株式を先代経営者以外の方が所有している場合でも、株を「集めやすい」環境となったといえます。
贈与や相続によって後継者が先代経営者等から株式を取得する際の税金を100%猶予できるため、円滑な事業承継を行うことのできる制度となっています。
ただし、承継計画書の提出を令和6年(2024年)3月31日までに行うこと、適用要件の確認などを踏まえると早めの対策を行うことが必要と考えられます。
当事務所では認定支援機関として手続きから贈与、相続まで幅広くサポートいたしますので、ご不明な点などがあればまずはお気軽にお問い合わせください。